タロットの歴史と構造、そして読み方:カードゲームから象徴の道具へ・78枚・コートカード・愚者の旅・数秘術
タロットはエジプトの秘密の経典ではなく、15世紀イタリアのカードゲームから始まりました。78枚の構造、四つのスートとコートカード、「愚者の旅」という解釈の伝統、数秘術とのつながり、そしてタロットを自己省察の道具として使う方法を、出典とともにまとめました。
最終確認 2026-09-29
タロットはどこから来たのか
タロットは古代エジプトの秘密の知恵を伝える書物だ、という話を聞いたことがあるかもしれません。歴史家の研究は違うことを示しています。タロットは15世紀半ば、北イタリアの宮廷で「タロッキ」と呼ばれたカードゲームとして始まりました。ミラノのヴィスコンティ家とスフォルツァ家のために描かれた豪華なカードが、現存する最古のタロットです(Dummett, 1980)。
占いや神秘主義の道具になったのは、ずっと後のことです。1781年、フランスのアントワーヌ・クール・ド・ジェブランは、タロットにはエジプトの知恵が込められていると主張しましたが、根拠はありませんでした。その後、占い師や19世紀のオカルト団体が、占星術やカバラといった象徴体系をこれに重ねていきました(Decker, Depaulis & Dummett, 1996)。現在最も広く使われているライダー・ウェイト・スミス版は、1909年にアーサー・エドワード・ウェイトの企画とパメラ・コールマン・スミスの絵で世に出ました。
この歴史を知ると、タロットとの付き合い方が気楽になります。タロットは古代の予言書ではなく、何百年にもわたって人々が意味を重ねてきた象徴の集まりなのです。
78枚の構造
| 区分 | 枚数 | 内容 |
|---|---|---|
| 大アルカナ | 22 | 0 愚者から21 世界まで、人生の大きなテーマ |
| 小アルカナ | 56 | 4スート × 14枚(エース〜10、コートカード4枚) |
四つのスートと元素
19世紀のオカルトの伝統で、四つのスートは四元素と結びつけられました。ライダー・ウェイト・スミスの伝統では、一般にこう読みます。
- ワンド(棒)—火:情熱、行動、始まり
- カップ—水:感情、人間関係
- ソード(剣)—風:思考、対立、判断
- ペンタクル(硬貨)—地:仕事、お金、体、現実
コートカード:人と態度
各スートのペイジ、ナイト、クイーン、キングの4枚は、実在の人物や自分がとっている態度として読まれることがよくあります。ペイジは学ぶ段階、ナイトは押し進める段階、クイーンは内側で磨く成熟、キングは外へ導く成熟、という具合です。コートカードが出たら「自分か周りの誰かが、こんな態度をとっていないか」と問うと解釈しやすくなります。
愚者の旅:大アルカナを一つの物語として
大アルカナを、0番の愚者が1番の魔術師から21番の世界まで順に出会っていく成長の物語として読む方法を「愚者の旅」といいます。もとのゲーム用カードにはこうした物語はなく、20世紀の解説書を通じて広まった解釈の伝統です。レイチェル・ポラック(1980)は大アルカナを三段階の旅として読み、サリー・ニコルズ(1980)はユング心理学の元型と個性化の過程になぞらえて解釈しました。
この枠組みは、22枚を一枚ずつ覚える代わりに流れとして覚える助けになります。ただし、これは歴史的な本来の意味ではなく現代の読み方だと知ったうえで使うとよいでしょう。ジョーゼフ・キャンベルの「英雄の旅」と似た構造なので、比べて論じる解説も多くあります。
数秘術とのつながり
タロットのカードに付いた番号は、数秘術(数に意味を与える伝統)とよく結びつけられます。たとえば1は始まり(魔術師、エース)、10は一つの循環の完成(運命の輪、各スートの10)と読みます。生年月日を足して「誕生カード」を決める方法も広く使われています。
こうした結びつきは象徴を連想するのには役立ちますが、数が人の性格や運命を決めるという科学的根拠はありません。楽しい連想の道具として使うのが適切です。
タロットを自己省察の道具として使う
タロットが未来を当てるという証拠はありません。それでも多くの人がタロットを使うのは、無作為に引いた象徴が自分では気づかなかった視点を思い出させてくれるからです。次のように使うと、より役に立ちます。
- はい・いいえの質問より開いた質問:「あの人とうまくいく?」より「この関係で自分が見落としていることは何?」
- カードが思い出させたことを書き留める:解説書の意味より、絵を見て浮かんだ考えのほうが大切です。
- 決めるのは自分:健康、お金、法律のような大事な決定は、カードではなく事実と専門家の助言で下しましょう。
一目でわかるまとめ
| テーマ | 要点 |
|---|---|
| 起源 | 15世紀イタリアのカードゲーム、占いへの使用は18世紀末から |
| 構造 | 大アルカナ22枚+小アルカナ56枚(4スート×14枚) |
| 四つのスート | ワンド=火、カップ=水、ソード=風、ペンタクル=地 |
| コートカード | ペイジ・ナイト・クイーン・キング=態度の段階 |
| 愚者の旅 | 20世紀に広まった解釈の伝統 |
| 数秘術 | 連想の道具、科学的根拠なし |
| 使い方 | 開いた質問、浮かんだ考えを記録、決めるのは自分 |
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参考文献
- Dummett, M. (1980). The Game of Tarot: From Ferrara to Salt Lake City. Duckworth.
- Decker, R., Depaulis, T., & Dummett, M. (1996). A Wicked Pack of Cards: The Origins of the Occult Tarot. St. Martin’s Press.
- Court de Gébelin, A. (1781). Le Monde primitif, vol. 8.
- Waite, A. E. (1910). The Pictorial Key to the Tarot. Rider.
- Pollack, R. (1980). Seventy-Eight Degrees of Wisdom. Aquarian Press.
- Nichols, S. (1980). Jung and Tarot: An Archetypal Journey. Samuel Weiser.