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芸術療法の主な技法 — 粘土、コラージュ、マンダラ、デジタルアートとそのエビデンス

粘土はなぜ身体の体験を引き出すのでしょう? 雑誌写真のコラージュはどのように物語をつくるのでしょう? マンダラの塗り絵は本当に不安を減らすのでしょうか? 主な技法の原理と研究、使うときの注意点を大学レベルで整理しました。

最終確認 2026-09-29

技法は目標に合わせて選びます

同じ技法でも、クライエントや目標によって効果は変わります。2章の表現療法連続体で見ると、粘土は運動感覚・感覚の水準、コラージュは認知・象徴の水準、マンダラは知覚の水準に強みがあります。技法を選ぶことは「何をつくるか」より、「今この人にどんな体験が必要か」という問題です。

粘土:手と体でする作業

ショルトとギャヴロン(Sholt & Gavron, 2006)は、芸術療法と心理療法における粘土の作業についての文献を検討し、粘土の治療的な特性を次のようにまとめました。

  • 触覚と運動感覚:押す、たたく、転がすといった動作が体の感覚を目覚めさせます。言葉では近づきにくい感情が、手を通して出てくることもあります。
  • 立体性と変えられること:形をつくり、壊し、またつくれるので、「やり直せる」という安心感とコントロール感をもたらします。
  • 退行と表現:柔らかな感触が幼いころの感覚を呼び起こして深い感情表現を助けますが、そのぶん慎重に扱う必要があります。

グラウンディングにも使われます。トラウマの記憶に巻き込まれるクライエントが、粘土の温度や重さに注意を向けると、今ここに戻る助けになることがあります。ただし感覚が敏感な人やべたつく感触が苦手な人にはかえって不快なこともあるので、道具(めん棒、へら)を一緒に渡したり、柔らかすぎない粘土を使ったりして調整します。

コラージュ:イメージを選んで物語をつくる

ランドガーテン(Landgarten, 1993)は、雑誌の写真を切り貼りする雑誌写真コラージュを、アセスメントと治療の道具として体系化しました。コラージュの長所は次のとおりです。

  • 描く負担が少ない:「絵が下手」という負担なしに、すでにあるイメージを選ぶことで表現できます。
  • 選ぶこと自体が自己表現:たくさんの写真の中で何に惹かれ、何を捨てるかが、価値観や関心を表します。
  • 物語をつくる:イメージを並べて過去・現在・未来をつなぐ物語をつくることで、自分の物語を書き直す作業につながります。

自分のさまざまな面をカード型のコラージュにするソウルコラージュ(Frost, 2001)のように、商標がついた方法もあります。こうした方法は自己探求の活動として広く使われていますが、効果を検証した研究はまだ多くありません。

マンダラ:円の中に描き、塗る

ユングがマンダラを心の統合と結びつけて以来(1章参照)、円の中に描いたり塗ったりする活動は芸術療法でよく使われてきました。

カリーとカッサー(Curry & Kasser, 2005)は、大学生にまず不安を高める課題を与えたあと、20分間、①マンダラの塗り絵、②格子模様の塗り絵、③白い紙への自由画のいずれかをしてもらいました。マンダラと格子模様の塗り絵の群では不安がより大きく下がりましたが、自由画の群ではそれほど下がりませんでした。これは、マンダラの特別な象徴よりも構造化された模様に集中することが瞑想のように働いた可能性を示しています。その後の研究では結果が分かれることもあり、大人の塗り絵本が治療の代わりになるとは言いにくいのです。

デジタルアート

タブレットやお絵かきアプリは、青年や身体に制約のあるクライエントにとって利用しやすさを高めます。元に戻す機能は失敗への不安を減らしますが、反対に素材の感覚的な体験や、「取り消せない線」がもたらす受容の体験は弱まるかもしれません。また、作品ファイルの保管や写真の共有といった個人情報と守秘の問題も、あらかじめ決めておく必要があります。

確認問題

問題1. 口数が少なく、感情について「わからない」としか言わない成人のクライエントに、粘土の作業を提案する理由を説明してみましょう。

解説. 粘土は運動感覚・感覚の水準の体験を提供し、言葉では近づきにくい感情が手の動きを通して表れるのを助けます。つくって壊してまたつくれることが、安心感にもつながります。

問題2. カリーとカッサーの研究結果を、「マンダラには特別な癒やしの力がある」という根拠に使えるでしょうか?

解説. 難しいでしょう。格子模様の塗り絵でも同じように不安が下がったので、効果はマンダラの象徴より構造化された模様に集中する活動から来た可能性が高いのです。


参考文献

  • Sholt, M., & Gavron, T. (2006). Therapeutic qualities of clay-work in art therapy and psychotherapy: A review. Art Therapy, 23(2), 66–72.
  • Landgarten, H. B. (1993). Magazine Photo Collage: A Multicultural Assessment and Treatment Technique. Brunner/Mazel.
  • Frost, S. B. (2001). SoulCollage: An Intuitive Collage Process for Individuals and Groups. Hanford Mead.
  • Curry, N. A., & Kasser, T. (2005). Can coloring mandalas reduce anxiety? Art Therapy, 22(2), 81–85.
  • Hinz, L. D. (2020). Expressive Therapies Continuum: A Framework for Using Art in Therapy (2nd ed.). Routledge.
  • Malchiodi, C. A. (Ed.). (2018). The Handbook of Art Therapy and Digital Technology. Jessica Kingsley.